9月26日、怒濤の6日間が幕を閉じた。
NOCTURNAL BLOODLUSTの主宰により東京・渋谷のライブハウス、CYCLONEを舞台に繰り広げられた
『6 DAYS OF CHAOS』が、この夜をもって完結に至ったのだ。
6夜連続ではなく、9月4日、5日、12日、20日、25日、そしてこの26日と、
週末を中心に断続的に組まれていたこの公演は、彼ら自身がヘッドライナーを務めながら、
各公演2組のゲスト・バンドを招き、いわゆる対バン形式にて実施されてきた。
つまり6日間を通じて、12組のバンドがノクブラとぶつかり合うことになったというわけだ。
当のNOCTURNAL BLOODLUSTからすれば、ちょうど9月1日に「THE ONE」と題されたニュー・シングルが
発売された直後でもあるだけに、時期的には何よりも同作品のプロモーションに重きを置きたかったはずだし、
去る2月の『THE DAWN OF A NEW AGE』(Veats Shibuyaでの1日2回公演)、
5月の『2 DAYS ONEMAN LIVE“NEW WORLD ORDER”』(SHIBUYA PLEASURE PLEASUREでの2夜公演)という
有観客公演からの流れを汲みながら、今回もワンマン公演を行なうのが教科書通りの流れではあったかもしれない。
また、こうして多数のゲストを招くのであれば、もっと規模の大きな会場でのイベントにするという選択肢もあったはずだ。
そこで敢えてひとつのライブハウスを拠点とした対バン形式での実施という選択がなされていたことに、
何よりも彼ら自身の意思が反映されていたといえる。
筆者は全6公演のうち5公演までを観てきたが、まず公演初日にフロア後方で
彼らのパフォーマンスに触れた際に味わったのは、「ノクブラが然るべき場所に帰ってきた!」という興奮だった。
いや、もちろん前述の各公演においても、配信では味わうことのできない音圧、
精度の高い演奏を存分に堪能することができていたのだが、整然と客席が並ぶ環境で向き合うのとはやはり“圧”の強さが違う。
確かに、去る2月と5月のライブにおいても起立しての観覧は可能だったし、
今回の舞台となったCYCLONEの場合も椅子無しでこそあれ観覧位置が完全に指定された状態にあり、
従来のようなフロアの自由度が取り戻されていたわけではない。
ただ、不思議なもので、座席が無いというだけで何かひとつ足枷が外れたような感覚があり、
ステージ上の5人が発するものがよりダイレクトに伝わってくるように感じられた。
当然ながら彼らには、本意ではないながらも重ねてきた全席指定公演の経験から学んできたこともあるはずだ。
が、こうしてよりライブハウス然とした空気が色濃い場で向き合ったことで、
筆者自身「このバンドがどこから生まれてきたか」を改めてリアルに実感させられることにもなった。
ただ、誤解して欲しくないのだが、ノクブラにライブハウスの空気が似つかわしいというのは、
彼らがそのサイズ感にとどまるバンドだという意味ではない。
実際、初日の時点で、CYCLONEのステージが彼らにとって狭すぎることは明白だった。
しかし、ライブを重ねるごとにメンバーたちのステージ上での循環が活発かつ円滑になり、
各自の表情からもナチュラルな高揚感が伝わってくるようになった。
しかも、一般的なライブハウスの平均を超える“クオリティを伴った大音量”がこの会場の特徴でもあるだけに、
研ぎ澄まされた演奏が必要充分以上の迫力を伴いながらビシビシと伝わってくるし、
楽曲展開と見事にシンクロした照明効果にも、そこがライブハウスであることを忘れさせるかのようなスケール感があった。
いわば、大型フェス会場の最前方ブロックで観ているかのような興奮が、そこにあったのだ。
これまでのライブからも、このバンドが過去以上に音楽的に足並みが揃った状態にあること、
機会を重ねるたびにその精度が高まっていることを実感させられてきたが、
この『混沌の6夜』における彼らのパフォーマンスから感じられたのは、
完全にすべてが噛み合った状態にあるバンドにプラス・アルファの何かが加わった際の、桁外れの強さだった。
その何かをもたらしたのは、ライブハウスという環境ばかりではない。
彼らと同じステージに立ったゲスト・バンドたちの熱演も、ノクブラの火に油を注ぐことになったはずだ。
実際、筆者自身も全12組の共演者たちのうち10組のステージを目撃してきたわけだが、
ヘヴィでラウドという共通項はありながらもさまざまな個性を持ったバンドたちが感じさせたのは、
あわよくばヘッドライナーを喰ってやろうという、良い意味でがつがつとした意欲と勢いだった。
実のところ、なかには本領を発揮しきれなかったバンドもいたことだろう。
ただ、それでも、各バンドがもたらす色調の異なった刺激が、その場の熱を上昇させ、
ノクブラの体温や心拍数を高めていたことは間違いないはずだ。
また、とても興味深かったのは、公演初日の時点では「リリースされたばかりの新曲」として披露されていた
“THE ONE”が、シリーズ終盤ではライブを締め括る象徴的な楽曲として、
早くも特別な存在感を放つものとして進化を遂げていたことだ。
コロナ禍がまだ完全終息には至っていないこの現状の中、
ロック・バンドにとって「やりたくてもできにくいこと」の筆頭が、
ライブハウス・ツアー実施とフェス開催ということになるだろう。
それこそ新作発表後のツアーにおいて楽曲たちが成長を遂げていくさまを実感できることが、
本来はバンドにとっての活力や次なる作品生み出すうえでの燃料にもなるわけだが、
途切れ途切れのライブ活動ではそうしたものもなかなか得難いという現実がある。
ただ、こうして9月に集中的に実施された6公演は、
ノクブラ自身にとっても“THE ONE”という楽曲にとっても進化を体感できる好機となったはずだ。
同時に、短期間のうちに同じ場所でさまざまな熱演を味わえたという意味においては、
志を共にするバンドばかりが集うフェスを観終えた時のような充足感もあった。
昔から「必要は発明の母」などと言われるが、ツアーもフェスも実施が難しい現状がこうした発想に繋がったのだと考えれば、
コロナ禍によりもたらされたのはネガティヴなものばかりではないのではないか、と思えてくる。
この6日間はNOCTURNAL BLOODLUSTにとっても、各共演者たちにとっても大きな収穫となったに違いない。
ノクブラのフロントマンである尋は、このシリーズを通じて「友達ができた」などと照れくさそうな表情で認めていたが、
ライブハウスとバンドにとって苦境が続く中でこうした共闘を成功させたことが、
次なる新たな流れを生むことに繋がるはずだと信じたいものだ。
そして公演最終日には、その尋の口から、10月31日に同じCYCLONEにてハロウィン公演の実施が決まったことが報告された。
昨年同様、今年のハロウィンも渋谷が例年のようなお祭り騒ぎになることはないはずだし、
それは来年以降へのお預けとなって然るべきだろう。しかしその夜、同じ渋谷の地下空間で、
彼らは極上の刺激を提供してくれるに違いない。
≪LIVE≫
NOCTURNAL BLOODLUST presents “DEADLY HALLOWEEN”
2021年10月31日(日) SHIBUYA CYCLONE OPEN 17:00 / START 17:30
【チケット料金】
前売 5,800円 (税込 オールスタンディング) NOCTURNAL BLOODLUST 特製不織布マスク付(5枚セット)
※入場時ドリンク代別途必要
※未就学児入場不可・営利目的の転売禁止
※立ち位置指定
【一般発売】
2021年10月16日(土)
【問】DISK GARAGE
050-5533-0888 https://www.diskgarage.com/
≪Release≫
■NEWシングル「THE ONE」発売中
ストリーミング&ダウンロード https://ncbl.lnk.to/THEONE
THE ONE (Music Video) https://youtu.be/539-pDPquFQ
【初回限定盤(CD+DVD)】
価格:5,350円(税込) 品番:DCCA-1052/1053
<CD>
1.THE ONE 2.Corruption 3.THE ONE (Instrumental)
<DVD>
NOCTURNAL BLOODLUST “SPECIAL ONLINE LIVE”収録
※2020年12月20日に行われた新体制での初のオンラインライブを完全収録!
【通常盤(CD)】
価格:1,500円(税込) 品番:DCCA-1054
■過去作品一挙配信
ストリーミング&ダウンロード https://lnk.to/NOCTURNALBLOODLUST