NOCTURNAL BLOODLUSTが3カ月ぶりの有観客ライヴを二夜連続で敢行!
規制の伴う環境下で示された、“今”を象徴する研ぎ澄まされた整合感。
そして9月には新作シングル発表とともに都内6公演を実施!
5月25日と26日の両日、NOCTURNAL BLOODLUSTが東京は渋谷のPLEASURE PLEASUREにて、『NEW WORLD ORDER』と題された二夜公演を実施した。緊急事態宣言下、当然ながらこうした興行には依然としてさまざまな規制が伴い、観客数を制限しながらの開催となったが、両日とも発券数とほぼ同数の熱心なファンが詰めかけ、第二夜は完全ソールドアウトとなった。昨年12月にはミニ・アルバム『The Wasteland』の発売を経て、新布陣でのお披露目となる配信ライヴを行ない、さらに今年の2月には東京・Veats Shibuyaにて『THE DAWN OF A NEW AGE』と銘打ちながら有観客での昼夜二回公演を実施している彼ら。このご時世にあって比較的コンスタントなライヴ活動ができていると言って差し支えないはずだが、そもそもスタンディング形式のライヴハウスを主戦場としてきたバンドだけに、椅子の並ぶ環境で演奏すること自体に彼ら自身が少なからず違和感をおぼえていたに違いない。
PLEASURE PLEASUREは、かつて映画館だった場所でもあり、当然のように座席が固定された状態にある。2階席もあり、いわゆる小ホールといった雰囲気だ。その場内、観客はほぼ一席おきに並び、開演前のアナウンスでは「起立しての観覧はOKだが、所定の席の場所から動いてはならない」というお達しが。そしてもちろん場内でもマスク着用が義務付けられ、大声を発することも禁じられている。もはやそうした新常識にも慣れているはずではあるが、ある意味これは観客側にとって拷問に近いものだといえる。なにしろ目の前の5人から放出される爆音に浸ることはできても、そこでステージに駆け寄ることはおろか、叫ぶことすらも叶わないのだから。冒頭、筋肉の鎧で完全武装したフロントマンの尋は「東京、暴れる準備はいいか!」と扇動的な声をあげたが、観衆はそれに声で反応することができない。しかも、そこで本当にフィジカルな意味で暴れることは許されないのだ。
しかしNOCTURNAL BLOODLUSTは、そうした“世界の新たな秩序”に則りながら、今、この状況下で可能な限り刺激的で挑発的なライヴをやり遂げたと言っていいだろう。二夜を通じ、そのライヴ・パフォーマンス自体に極端な具体的差異はなく、演奏曲の顔ぶれも多くは共通していたが、その序列は大胆に入れ替えられていた。敢えて言うならば第一夜は起伏に富んだドラマ性が、第二夜は勿体を付けずに畳みかけるような攻撃性が重んじられていたが、そこで双方に共通していたのは、このバンドの“今”がリアルに伝わってくることだった。
当然ながら、この顔ぶれでの最初のCDとなる『The Wasteland』に収録の6曲、そしてその発売前に配信リリースされていた“Life is Once”、“ONLY HUMAN”、“Reviver”といった正真正銘の最新曲たちがライヴの軸となっていたが、興味深いのは、そこに織り交ぜられた従来の代表曲の数々が、遠い過去のものには感じられなかったことだ。ValtzとYu-taroという新たなギター・チームによって再構築されたそうした楽曲群は、あからさまにアレンジが刷新されているわけではないのに、生まれ変わったかのような新鮮な響きを伴っていた。かつて、ある種のいびつさを持ち味としていた楽曲が整合性を増し、より鋭利なものとして研ぎ澄まされているという印象でもあった。しかも現体制になってから生まれた楽曲のいくつかは、すでにライヴにおける立ち位置を確立しているように感じられ、連なる楽曲同士が相乗効果めいたケミストリーを引き起こし、実際のテンポ以上の体感スピードを醸し出すようになっていた。それゆえに約90分に及ぶ経過が、とても早く感じられた。
第二夜の終盤には、9月に新たなシングルがリリースされる予定であること、そして同月に都内で全6本ものライヴを行なう計画が固まっていることが尋の口から告げられ、オーディエンスは歓声の代わりに大きな拍手で喜びの意思表示をしていた。その時期にライヴ会場がどれほどの自由を取り戻せているのかは、推定のしようもない。そこでバンドと観衆の双方が解き放たれることになるのか、それともやはり“世界の新たな秩序”に縛られたままなのか? もちろんその答えが前者であることを願いたいものだが、ハードコア・オーケストラとでも形容したくなるほどに機能的な構築美が感じられたこの二夜のライヴ・パフォーマンスを判断材料とするならば、仮に後者のような状況が続いていようと、5人はさらなる進化をその場で披露してくれることになるものと想像できる。だからこそ、当たり前の自由さを手に入れた時の彼らがどのような混沌を巻き起こすことになるのかが、楽しみでならない。
増田勇一